国内外で日本の漫画への関心が高まり続けるなか、私たちは2つの全国調査(全国1,000名への調査と、100名の漫画クリエイターを対象としたフォローアップ調査)を実施し、AIの影響拡大や西洋での実写化について、読者とクリエイターがどのように受け止めているのかを探りました。この結果は、新しい制作ツールの可能性や海外での展開が広がる今、漫画がどのように変化していくのかを理解するための手がかりとなります。
主な調査結果
【AIに関して】
- 1
- 日本人の3分の2は「AIが主に作った漫画は読みたくない」と回答。全体の65%が消極的または拒否的で、強い文化的抵抗がうかがえる。
- 2
- 41.7%が「AIは漫画家の仕事を脅かす可能性がある」と懸念。多くの人が職業的な影響や置き換えを予想している。
- 3
- 約45%は「AIはどの創作工程でも人間より優れていない」と考えている。人間の創作力への強い信頼が見られる。
- 4
- AIが作った漫画を「ぜひ読みたい」と答えた人はわずか8.5%。ごく少数のアーリーアダプターにとどまる。
- 5
- AIに対して明確な意見を持つ層では、否定的意見が肯定的意見を上回る。28%が否定的、20%が肯定的で、慎重派が優勢。
- 6
- AIに対して「どちらとも言えない」と回答した人が52%。世論がまだ定まっていない状態がうかがえる。
- 7
- AIを信頼する人でも、その信頼は主にビジュアル作業に限定される。16~21%がキャラデザイン・背景・彩色なら「AIが人間を上回る可能性がある」と回答。
- 8
- 物語構成やセリフづくりでAIが人間を超えると考える人は約15%。文章表現は依然として「人間の領域」と見なされている。
クリエイターによる回答結果(フォローアップ調査):
- 1
- 読者の不安とは対照的に、クリエイターのAI活用はすでに広く浸透。本調査では59%がAIツールを使用している。
- 2
- AIにより「大幅に」または「ある程度」生産性が向上したと答えた人が3分の1以上。合計60%がワークフローの効率化を実感。
- 3
- AIの使用場面で最も多いのはキャラクターデザインとアイデア出し。45~48%が初期制作工程でAIを活用。
- 4
- クリエイターの主な懸念は「技術の衰退」と「読者からのネガティブな受け止め」。いずれも約38~39%で、技術継承と読者の信頼維持に対する不安が強い。
【西洋での実写化に関して】
- 1
- 日本人の約半数は「西洋の漫画実写化が存在すること自体を知らない」。44.5%が「知らなかった」と回答し、最大のグループとなっている。
- 2
- 実写化について「特に気になる点はない」と答えた人が44.5%。無関心層が非常に多いことが特徴。
- 3
- 態度として最も多いのは「どちらでもない」という中立的姿勢。40%が賛否を示さず、強い感情を持たない。
- 4
- 意見を持つ人の中では、否定的意見がわずかに肯定的意見を上回る。否定31%・肯定28%で、比較的慎重な姿勢が見られる。
- 5
- 複数の実写化作品を視聴したことがある人は約7人に1人。継続的な視聴者はごく少数。
- 6
- 懸念点として最も多いのは「文化的な誤解・ゆがめられ方」。27.9%と、制作やキャスティングに関する不安を大きく上回る。
- 7
- 日本での知名度を支えるのは主に『ONE PIECE』と『Death Note』。この2作品がカテゴリ全体を代表している。
- 8
- クリエイターの多くは「日本の専門家が実写化に関わるべき」と考えている。62%が「必須」または「望ましい」と回答し、文化的監修の必要性が強く示されている。
調査方法
読者とクリエイターが、漫画制作におけるAIの活用や西洋での実写化をどのように受け止めているのかを明らかにするため、2025年11月にセルフ型アンケートツール「Freeasy」を利用して2つの調査を実施しました。
1つ目の 調査は、2025年11月4日に全国の15〜99歳の1,000名を対象に行われました。ここでは、AIによる漫画制作や西洋での実写化に関する認知度、態度、視聴・読書行動など、一般読者の幅広い意識を把握しました。
続いて、11月13日〜15日に実施したフォローアップ調査では、初回調査から抽出した漫画クリエイター100名を対象に、制作ワークフロー、AIツールの利用状況、海外実写化への考え方、そして今後の漫画制作に対する見方を詳しく尋ねました。
これら2つの調査により、一般読者と業界のクリエイターがAI、創作、文化的な翻案をどのように理解し、どこで意見が重なり、どこで違いが生じているのかがより立体的に見えてきます。
調査結果
スクリーニング調査
Q1 日本のマンガを原作とした欧米の映像作品(ドラマ・映画)を観たことがありますか?

調査対象:男性500名、女性500名
西洋で制作された漫画の実写化については、全体的に認知度が低いことがわかりました。回答者の44.5%が「そのような実写化があることを知らなかった」と答えており、最も多い回答となっています。さらに28%は「知っているが観たことはない」と回答し、実際に1作品以上を観た経験がある人は全体の14~15%程度にとどまります。認知していない層が、視聴経験のある層を大きく上回っています。
性別による違いとしては、複数の実写化作品を観たと答えた割合は男性の方が高く、一方で「まったく知らなかった」と答えた割合は女性の方が高い結果となりました。 全体として、西洋の漫画実写化について「知らない」人が多く、実際に視聴したことがある層はごく少数にとどまっています。
Q2 欧米で制作された日本のマンガの実写化について、全体的にどう思いますか?

調査対象:男性500名、女性500名
日本の漫画を原作とした西洋の実写化作品に対する態度は、全体として大きく偏らず、比較的穏やかな評価が中心となりました。最 も多かったのは中立的な回答(40.3%)で、肯定的な見方(28.5%)と否定的な見方(31.2%)はほぼ同じ割合に分かれています。強い支持や強い反対の声も一定数ありますが、多くの回答者は極端な意見ではなく、中間的な立場を取っていることがうかがえます。
全体として、西洋での漫画実写化に対する態度は中立・穏当なものが主流で、肯定・否定が大きく偏ることはありませんでした。
Q3 観たことがある欧米のマンガ実写作品を教えてください。

調査対象:男性156名、女性119名 (複数回答形式、西洋の実写化作品を1作以上視聴したことがある人のみが対象)
西洋で制作された漫画の実写化作品を視聴した人の間では、視聴がごく少数の有名タイトルに集中していることが明らかになりました。最も多く視聴されているのは『ONE PIECE』(43.3%)と『Death Note』(42.9%)で、次いで『Dragonball Evolution』(36.4%)が続きます。『Ghost in the Shell』(26.6%)や『Alita: Battle Angel』(24.4%)は約4分の1の回答者が視聴しています。「その他」を選んだ人はごくわずかで、約14%は「どの作品を観たか覚えて いない」と答えました。全体として、視聴経験は一部の知名度の高い作品に偏っている傾向があるようです。 実写化作品を観たことがある回答者の多くは、限られた主要タイトルのみを視聴しており、とくに『ONE PIECE』と『Death Note』が際立った存在となっています。
Q4 日本のマンガが海外(欧米)向けに映像化されることについて、どう感じますか?一番近いものを選んでください。

調査対象:男性500名、女性500名
日本の漫画が西洋向けに実写化されることについて、全体的な意見は穏やかで、強い賛否よりも「どちらでもない」または控えめな肯定に寄る傾向が見られました。最も多いのは「特に何も感じない」(34.2%)という回答で、次いで「嬉しいが、原作の忠実度が気になる」(24.5%)が続きます。両者を合わせると約6割となり、強い賛成や強い反対よりも、中間的または慎重な肯定が主流であることが分かります。 明確な肯定は18.6%にとどまり、「日本のコンテンツが海外で評価されることを誇りに思う」と回答しています。一方で否定的な意見も一定数存在し、「実写化の必要はない」(10.2%)、「反対」(12.5%)といった回答が見られますが、あくまで少 数派となっています。
全体として、多くの回答者は強い好悪を示すのではなく、比較的中立的な姿勢をとっていることがうかがえます。
Q5 欧米でのマンガ実写化で気になる点を教えてください。

調査対象:男性500名、女性500名 (複数回答形式)
西洋で制作される日本漫画の実写化について、回答者の約半数(44.5%)は「特に気になる点はない」と答えました。何らかの懸念を持つ層に限ると、最も多いのは「文化的な誤解やミスリード」(27.9%)で、次いで「キャスティングの問題」(21.1%)、「原作へのリスペクト不足」(19.4%)が続きます。「作品のクオリティ」(15.0%)や「構成・テンポの問題」(10.7%)は比較的少数派でした。全体として、懸念を抱く人々は、映像技術よりも文化的な正確さに重点を置く傾向が見られます。
男女差については、1点だけ明確な違いがあります。男性は女性よりも「原作へのリスペクトが守られているか」を懸念する割合が高いという点です。
総じて、文化的な正確さに多少の懸念が見られるものの、多くの回答者は強い懸念を持っていない傾向が見られます。
Q6 マンガ制作におけるAIの活用について、あなたの意見を教えてください。

調査対象:男性500名、女性500名
漫画制作におけるAIの活用については、「どちらとも言えない」とする回答が過半数(52.1%)を占めました。多くの人が、AIを漫画制作に取り入れることについて、まだ明確な判断を下していない様子がうかがえます。明確な意見を持つ層に限ると、否定的な見方(28.1%)が肯定的な見方(19.8%)をやや上回り、積極的な期待よりも慎重な姿勢がやや強い傾向にあります。
男女差については1点だけ特徴があり、女性のほうが「やや否定的」と答える割合が高くなっています。
総じて、多くの回答者はAIの導入にまだ判断を保留しており、明確な意見を持つ人のあいだでは慎重さがやや優勢となっています。
Q7 AIが人間よりも優れると思う制作作業はどれだと思いますか?

調査対象:男性500名、女性500名 (複数回答形式)
全体の45.2%が「AIが人間より優れている創作作業はない」と回答しました。漫画制作における創造性でAIが人間を上回るとは考えていない人が多く、強い懐疑心がうかがえます。
AIに強みがあると考える回答者は少数派で、その評価は各作業で大きく変わりません。比較的評価が高かったのはビジュアル系の作業で、背景描写(20.9%)、キャラクターデザイン(19.4%)、彩色(17.5%)が上位となりました。物語構成(15.0%)やセリフ生成(13.9%)については、AIが人間を上回ると考える人はさらに少なくなります。全体として、特定の作業でAIが人間より優れていると考える人は限定的です。 総じて、多くの回答者はAIが漫画制作の主要な創作工程で人間を上回るとは考えておらず、AIの強みがあると見なされる場合でも、その範囲は主にビジュアル面に限られています。
Q8 AIの進化によって、マンガ家の仕事が脅か されると思いますか?

調査対象:男性500名、女性500名
AIが漫画家の仕事を脅かす可能性について、回答は大きく分かれましたが、安心よりも不安や判断保留が上回る結果となりました。「脅威になる」「脅威になる可能性がある」と答えた人は合計41.7%にのぼり、さらに30.9%は「わからない」と回答しています。これに対し、「脅威にはならない」と考える人は27.4%と、3割弱にとどまりました。全体として、AIの影響については楽観よりも不安や判断保留が優勢です。
多くの回答者は、AIが漫画家の仕事に影響を与える可能性があると考えるか、もしくはまだ判断がついておらず、リスクが小さいとみなす人は少数派にとどまっています。
Q9 もし大部分がAIで制作されたマンガだと知っていても、読みたいと思いますか

調査対象:男性500名、女性500名
AIを主に用いて制作された漫画を読みたいかという質問では、全体的な関心は低い結果となりました。「ぜひ読みたい」と答えた人はわずか8.5%、「たぶん読む」が26.2%で、肯定的な層は約3分の1にとどまります。一方で否定的な回答は多数を占め、41.0%が「あまり興味がない」、さらに24.3%が「読みたくない」と答えています。合計すると65.3%が消極的または拒否的であり、AI制作の漫画に対する抵抗感が強く表れています。
全体として、AIが制作に大きく関わった漫画に対して前向きな読者は少数派で、多くの人は読むことに積極的ではないようです。
Q10 あなたは現在または過去にマンガ制作の仕事をしたことがありますか?もしくは将来マンガ家として働きたいと思いますか?

調査対象:男性500名、女性500名
漫画制作に直接関わっている、あるいは将来のキャリアとして考えている人はごく少数でした。現在漫画家として活動している人は5.4%、過去に漫画制作 に携わったことがある人は7.3%、将来漫画家になりたいと答えた人は8.7%で、合計しても約2割程度にとどまります。大多数の78.6%は、漫画を読む側として楽しんでおり、制作には関わらない立場です。
男女差が見られた点は2つあります。男性は過去に漫画制作の経験を持つ割合が高く、女性は「制作に興味がない」と答える割合が高いということです。一方で、現在の活動状況や将来の志望については男女で大きな違いはありません。 全体として、漫画を「読む側」として楽しむ人が圧倒的に多く、制作に関わる、あるいは将来関わりたいと考える人は限られています。
フォローアップ調査
Q1 以前のアンケートで「現在または過去にマンガ制作の仕事をしたことがある」と答えた方にお聞きします。 現在、マンガ制作にAIツールを使用していますか?

調査対象:男性61名、女性39名 (漫画制作の経験がある回答者のみが対象)
AIの導入は漫画制作者の間で既に広く進んでいます。全体の59%が制作 工程でAIツールを「定期的に」または「時々」使用しており、AIを使う予定がないと答えたのはわずか16%でした。漫画制作者の間ではAIへの抵抗が比較的少ないことが分かります。 総じて、今回の調査に参加した多くの漫画制作者が、何らかの形で既にAIを制作プロセスに取り入れていると言えます。
Q2 マンガ制作のどの工程でAIを活用していますか?

調査対象:男性32名、女性27名 (複数回答形式、AIを使用していると回答した制作者のみが対象)
AIを使用している漫画クリエイターの間では、その活用範囲が幅広いことが特徴的です。最も多いのはキャラクターデザイン(47.5%)と物語のアイデア出し(44.1%)で、続いてセリフ生成と背景作画(いずれも35.6%)が挙がりました。初期の発想段階から手間のかかるビジュアル作業まで、AIが多面的に活用されていることが分かります。
総じて、クリエイターたちはAIを「視覚面」と「物語面」の両方を支える多用途のサポートツールとして活用していると言えます。
Q3 マンガ制作において使用したことのあるAIツールを教えてください。

調査対象:男性44名、女性30名 (複数回答形式、AIツールを使用したことがある制作者のみが対象)
AIを活用している漫画クリエイターの間では、ChatGPTが最も広く使われており(52.7%)、プロット作成やセリフづくりなど、テキスト面でのサポートが大きな役割を果たしています。画像生成系ツールはより分散しており、Stable Diffusion(32.4%)、Midjourney(28.4%)、NovelAI(25.7%)など複数のサービスが使われています。文章支援とビジュアル生成の両面でAIを使い分けていることがうかがえます。
総じて、クリエイターは言語モデルと画像生成ツールを組み合わせ、制作工程に応じてそれぞれの強みを生かしながら活用しています。
Q4 AIツールはマンガ制作の生産性向上に役立っていると感じますか?

調査対象:男性61名、女性39名 (漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
AIによって生産性が向上したと感じるクリエイターが多数派を占めています。全体の60%が「大幅に向上した」または「やや向上した」と回答しており、一方で「効率が下がった」と答えたのはわずか8%でした。
ここでは明確な男女差が見られます。女性クリエイターは男性よりも「生産性が向上した」と答える割合が若干高く、反対に男性は「特に変わらない」と感じる人が相対的に多い傾向がありました。この結果から、本サンプルにおいては女性のほうがAIツールから実務的な恩恵を受けやすい可能性が示唆されます。
総じて、クリエイターはAIを制作効率を高める有用な手段として受け止めており、多くが実際に効果を実感しています。
Q5 マンガ制作におけるAI利用について、主な懸念点を教えてください。

調査対象:男性61名、女性39名 (複数回答形式、漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
クリエイターが抱えるAIへの懸念は多岐にわたりますが、最も多いのは「AIを使った作品に対する読者のネガティブな印象」(39%)と「伝統的な技術の衰退」(38%)でした。これは、読者からの評価という外的要因と、創作技術の維持という内的要因の両方を懸念していることを示しています。
総じて、クリエイターが最も気にしているのは競争や法的リスクよりも、AIが「作品の芸術性」や「読者からの見られ方」にどのように影響するかという点だと言えます。
Q6 今後、マンガ制作においてAIはどのような役割を果たすと思いますか?あなたの意見に一番近いものを選んでください。

調査対象:男性61名、女性39名 (漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
AIの将来的な役割について、クリエイターの見方は大きく分かれています。最も多いのは「AIの活用は一部の用途に限定されるだろう」という回答(42%)で、AIを“便利 な補助ツール”として捉える立場です。一方で、26%は「多くのクリエイターにとって必須のツールになる」と予想し、17%は「大きな変化や混乱をもたらす」と回答するなど、AIが今後どれほど影響を広げるのかについて意見が割れています。 男女差については一つ特徴が見られました。女性はAIが「必須ツールになる」と考える割合が高く、男性は「限定的な役割にとどまる」とみる傾向が強くなっています。これは、AIが実務に役立つと回答した女性が多かった前の質問とも一致する傾向です。
全体として、AIの未来像は“補助的な存在にとどまる”という見方から、“創作の中心的役割を担う可能性がある”という期待、“業界に大きな変化をもたらす”という不安まで幅広く、クリエイターの間でも先行きはまだ明確になっていません。
Q7 西洋向けのマンガの実写・アニメ化(共同制作含む)に直接または間接的に関わったことはありますか?

調査対象:男性61名、女性39名 (漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
今回の調査に参加したクリエイターの多くは、何らかの形 で海外向けの実写化プロジェクトに関わった経験を持っています。直接・間接を合わせると全体の54%が関与したことがあると回答し、「関わったことがない」と答えたのは24%にとどまりました。国際的な制作環境やクロスカルチャーな業務に比較的親しんでいる層であることがうかがえます。
総じて、このサンプルに含まれる多くのクリエイターが、海外向け漫画原作の実写化に大小さまざまな形で関わった経験を持っていることが分かります。
Q8 西洋によるマンガの映像化は、日本のマンガの世界的イメージにどのような影響を与えていると思いますか?

調査対象:男性61名、女性39名 (漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
クリエイターの多くは、海外での実写化について好意的な見方をしています。全体の69%が「日本の漫画の国際的なイメージ向上に役立っている」と回答し、「悪影響がある」と考える人は10%にとどまりました。残りは中立的な立場で、海外実写化に対して強い否定的感情を持つクリエイターは少ないことが分かります。 総じて、クリエイター は海外実写化を、日本の漫画が世界で評価されるためのプラス要素として捉えていると言えます。
Q9 日本のマンガを西洋向けに映像化する際、どのような課題が大きいと思いますか?

調査対象:男性61名、女性39名 (複数回答形式、漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
クリエイターが考える「海外向け実写化の難しさ」は複数ありますが、最も大きな課題として挙がったのは「物語のテンポや構成の違い」(42%)でした。次いで、「キャラクター描写・キャスティング」(34%)、「文化的・文脈的な違い」(30%)が続きます。これらの結果から、漫画特有のストーリーテリングをどのように翻案するかが、ビジュアル面や法律面よりも難しいと捉えられていることが分かります。
総じて、クリエイターが感じる最大の障壁は、技術的・法的な問題ではなく、物語構造や文化の違いといった「作品の本質」に関わる部分であると言えます。
Q10 西洋での映像化において、日本の専門 家の関与は重要だと思いますか?

調査対象:男性61名、女性39名 (漫画制作に携わった経験のある回答者のみが対象)
海外での実写化において、日本のクリエイターが関与すべきかについては、強い合意が見られました。全体の62%が「必須」もしくは「理想的に関与すべき」と回答しており、作品のオリジナリティや文化的な整合性を保つために、日本側のクリエイティブな判断が重要だと考える人が多数派です。「関与は不要」と答えたのはわずか8%でした。
総じて、海外実写化においては、日本の専門家が制作に参加し、文化面・物語面の双方で方向性を示すことが重要だと考えるクリエイターが多い結果となりました。
まとめ
今回の調査から、読者とクリエイターでは「これからの漫画の姿」に対する見方が大きく異なることが明らかになりました。一般読者のAIに対する姿勢は慎重というより、むしろ否定的に傾いています。AIを主に用いて作られた漫画を「読みたいとは思わない」と答えた人が多数を占め、AIによって漫画家の仕事が脅かされるのではないか、あるいは長年培われてきた技術や表現が失われてしまうのではないかと不安を抱く声も多く見られました。読者にとって、AI生成の漫画は「人の手による創造性」や「作品に宿る感情の深み」から距離を感じさせる存在であると言えます。
一方、クリエイターにはより実務的で現実的な視点が見られます。AIはすでに多くの制作現場で活用されており、大半のクリエイターが効率向上につながっていると評価しています。多くの場合、AIは創作そのものを置き換えるものではなく、作業を補助する道具として使われています。長文資料を要点だけ素早く把握するためにPDF要約ツールが使われるのと同様に、漫画制作においてもAIは一部の工程を効率化する手段として受け入れられていると言えるでしょう。
西洋での漫画実写化に対する見方にも、読者とクリエイターの間で明確な隔たりが見られます。読者の多くは、海外実写化について「そもそも存在を知らない」「特に関心がない」と回答しており、文化的な距離を伴う存在として捉えています。関心を示す層であっても、懸念の中心は制作クオリティではなく、文化的な誤解や原作の扱われ方に集中しています。多くの読者にとって、海外実写化は“自分たち向けではない”コンテンツとして認識されているのが実情です。
これに対し、クリエイターの多くは海外実写化に関わった経験を持ち、その意義を比較的前向きに評価しています。日本の漫画が世界的に認知される機会になると考える人が多く、制作過程に日本側のクリエイターが関わることについても強い支持が見られました。これは西洋作品を排除する姿勢ではなく、文化的・物語的な一貫性を保ちながら国際的な協働を進めていきたいという意識の表れと言えます。
総じて、一般読者は「伝統性」や「漫画らしさ」といった本質的な価値を重視する一方で、クリエイターは新しいツールや国際展開に対して比較的柔軟で前向きな姿勢を示しています。革新そのものは受け入れられつつありますが、日本の漫画文化が持つ独自性や職人性を尊重した形で進められるべきだという点では、読者とクリエイターの間に共通した認識があることがうかがえます。
